ドラマ・チェルノブイリ

2022年4月24日

【1986年4月26日チェルノブイリ原発事故】

1986年、ソ連社会主義共和国連邦はミハイル・ゴルバチョフ書記長の下、ペレストロイカ(連邦政治変革)を掲げ党改革と経済の立て直しに向け大きな一歩を踏み出したばかりの当時のソビエトでまさにその大事故は起きました。

チェルノブイリ原発事故当時、私つき子は前年の冬、10日間のソビエト連邦の旅をして来たばかり、しかも滞在した白ロシア共和国(ベラルーシ共和国)はウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所近くを流れるプリペェチ川も一部流れるている地域だったので、日本でチェルノブイリ原発事故のニュースの一報に接した時は、なんとも背筋が凍る恐ろしさでした。

米HBO製作2019年5月に米国で配信され、9月より日本のスターチャンネル、10月からはAmazonプライムビデオでも配信されています。ドラマ・チェルノブイリは、1956年4月26日、当時ソビエト連邦の一部だった現ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所で起きた大事故をもとに製作させたドラマです。

2019年(第71回)エミー賞にて作品賞を含む10部門の受賞の超話題作です。


出典:スターチャンネル

 

【人類が経験した最悪の原発事故】

当時日本でもアメリカやヨーロッパの情報経由で、このニュースが伝わりました。ソビエトをはじめ東側諸国の動向は『鉄のカーテンで閉ざられている・・・』と言った言われ方がされていた時代、今の『北○○』や『パンダの祖国』の様に、情報統制され、国にとって不都合な情報は一切機密にされていた時代です。

秘密警察KGBが国民監視にあたり、国家にとって不都合は人々は排除する・・・そんな国で起きた地球規模の大事故でした。

ドラマの中でも語られますが、実際いち早く大気中の放射線濃度の異常を察知したスウェーデンやドイツ、アメリカの人工衛星により発見確認され、日本をはじめ西側諸国にチェルノブイリ原発事故は瞬く間に伝わりました。

そしてあまりにも事故の重大さが明らかだったため、ソ連のゴルバチョフ書記長も事実を認め全世界に公表しました。

事故後の映像も世界に配信されたのですが、事故対応にあたっている作業員のあまりの軽装備の様子に、当時私つき子もたいそう驚きを持ってこのニュースを観ました。

出典:スターチャンネル

ドラマの中でも、原発作業員達が、上下白のパン屋の厨房で働く様な作業服で、危険な原子炉の事故現場で働く姿を再現しています。

数年前、BS世界のドキメンタリーという番組でチェルノブイリ原発事故のその後を追ったドキメンタリーを観ましたが、事故当夜原発火災の消火に当たった消防士とその妻の証言が強く記憶に残っていて、このドラマでも重要なシーンとして消防士夫妻のストーリーが展開します。実際今も当時のままプリペェチ病院の地下に放置された消防士の衣服や、消防士の妻が死に行く夫と過ごした事で妊婦だった彼女の赤ちゃんが出産後数時間の人生しか与えられなかった事など、実話をもとに詳細に原発事故に巻き込まれた人々のリアルを描いています。

日本ではいまのところ、スターチャンネルとネット配信のAmazonプライムビデオのみですが、原発事故の被害者の表現が。かなりショッキングな映像でもあり、日本の地上波での放送はまず無理だと思います。

しかし、このドラマは、今日本に住む私達日本人にとって他国で33年前に起こった悲惨な事故を基にしたドラマと言う事だけに止まりません。チェルノブイリ原子力発電所の事故とその後のソビエト連邦の辿った歴史や、そこに住む同国民の犠牲に依存せざる得なかった事故処理についての真実。また何故こんな事故が起こったのかの追求と、その責任の所在を今後この国土に生き、産まれて、暮らして行くであろう次の世代の人々の為にも真実を明らかにする事の重要性を描いています。

原爆の被曝国であり、3.11原子力事故の当事国でもある私達日本人こそが真剣に向き合い、人知を結集して追求すべき問題の全てが盛り込まれていると思います。

実際、ドラマの中のセリフに『広島に投下された原爆の数千倍・・・』や『原子炉を冷却する為の冷却水を送るための電源確保・・・』と言ったセリフがドラマの中で語られて居るシーンでは私達日本国民が人事としてドラマを傍観することをけして許しません。

是非地上波で放送してほしいと、つき子は あえて 言います!

実は昨年、ネットでチェルノブイリ原発事故のドラマ化の情報に接し、主な配役が発表された時から、とても楽しみにしていたドラマでもあります。何しろHBO製作ですし、演技派の英俳優陣をはじめヨーロッパの名優人が勢揃い。ジャレッド・ハリス、ステラン・スカルスガルド、エミリー・ワトソン、アダム・ナゲイティス。話題の海外映画やドラマを良くご覧になる方はおなじみの演技派の名優陣です。

他にも1980年代のテレビドラマ風な画面の色味を出している所や、当時のソ連の子供達の学生服姿も懐かしい可愛さを出しているところなど逆に痛ましさを演出しています。

年末年始にもスカパーのスターチャンネル、またはAmazonプライムビデオでもお得なお試しプランで吹き替え版などもともにごらんになれます。(2019年/2020年)






【ジャレッド・ハリス】

2018年プライムビデオの『ザ・テラー』と言う北極探検隊の実際の遭難事故が基になった小説をドラマ化した作品をご存知でしょうかでしょうか?『ザ・テラー』の中でジャレッド・ハリスと若手英俳優のアダム・ナゲイティスが共演しています。これまた、ショッキングなシーンがあるので、ネット配信しかされない作品ですが、極地探検の中、飢えと寒さによる生命の危機に置かれた時の人間集団がどうなって行くのかと言った事が描かれています。ジャレッド・ハリスとアダム・ナゲイティスの対決が見所です。テーマはヘビーですが、ドラマとしては娯楽作でもあり楽しめます。こちらもまだプライムビデオで観る事が出来ます。英在住当時ビクトリア&アルバート博物館に良く通って居たつき子にとって、ドラマの中に出てくる茶器やロンドンの貴婦人の着用しているドレスのテキスタイルデザインなど、ビクトリアンアイテムなどにも心魅かれてドラマの世界に没入しました。細部にまでこだわりが散りばめられていて、ビクトリア時代の大英帝国全盛期の様子が垣間見えて歴史好きな方には勧めです。

 

【2020オリンピック】

今、来年2020年の東京オリンピックで復興五輪と名打ち、8年前の震災からの復興を世界に広く宣言したい様ですが、はたしてそれで良いのでしょうか?つき子は疑問です。

ドラマの終盤ギャレッド・ハリス演ずるヴァレリー・レガソフ博士は裁判長とのやり取りの中で言います。

裁判長

『レガソフ博士、かりに今回の事故の責任がソビエト連邦に有ると主張するつもりなら、貴方は危ない橋を渡っていますよ』

レガソフ

『それならとっくに渡っているし、今危ないのは連邦ですよ、秘密と嘘に塗れている、それが我々の姿です。真実が襲い掛かってくると沢山の嘘で覆い隠そうとするが、真実は消えません。嘘をつくたびに真実へのツケが溜まって行くんです。そのツケは必ず払わせられる』と。

出典:スターチャンネル

ドラマは最後にチェルノブイリ原発事故の本当の原因は『嘘』なのだと、象徴的な一言をジャレッド・ハリス演ずるヴァレリー・レガソフ博士に語らせています。そして、エンドロールの前に実際の映像とその後の詳細なども語られ、事故処理作業に従事した人々への敬意と犠牲者へ追悼の言葉を捧げておわります。

たいへん重い気持ちになりますが、感動しました。



 

【呆れた我が国】

私つき子は我が国の2019年9月19日の東電原発事故裁判の判決について、大いに疑問です。

そして、10月に明らかになった関西電力元助役の金品押し付け事件。(原発マネーの還流事件)

俗に言う札束で横っ面をはたく様なやり方で原発推進政策を推し進めて来たのがわが国の原発事業です。

札束はちょっと生々しいので、小判になったんでしょう。江戸時代じゃあるまいし!呆れる!

『モリ・カケ、関電、桜・・・。』我が国の現状はもはやB級ドラマです。

B級ドラマが展開される国に住む国民の身に起こることは悪夢の様な悲劇にほかなりません。

このドラマ・チェルノブイリを鑑賞した後、つき子はそう確信しました。